新田次郎著『武田信玄』『武田勝頼』
8月に『竜馬がゆく』を読了してから読んでゐた。『信玄』のみで止めるつもりだつたが、武田家滅亡まで付き合はうと続篇も読んだ。むしろ面白かつたのは続篇の方で、『信玄』は毎巻2週間程度で読み終はつてゐたが、『勝頼』は毎巻1週間で読み終はつた。
著者が気象庁に長く勤めてゐたため、それぞれの山場とも云へる第4次川中島の合戦と長篠・設楽ヶ原の合戦は、霧と梅雨といふ気象現象からの考察が為されてゐて作家の個性が遺憾なく発揮されてゐる。とくに長篠・設楽ヶ原の合戦は“鉄砲vs騎馬”といふ従来の常識に対して異議を申し立てたのは興味深い。後で知つたことだが、現在では鉄砲の三段撃ちは無かつたとの説が有力になつてゐるらしい。