『妄言師@無銘の銘柄.jp』アーカイブ

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『アルプスの少女ハイジ』第51回

今回のお話は、子供の頃に観てゐたなら「クララが歩けて良かつたね」で済んでしまふが、大人になつた今ではそんな単純な見方は出来ない。高畑勲監督が東大仏文科卒であること、おそらく学生当時流行りのサルトルに代表される実存主義の哲学・文学に通じてゐたであらう、といふことを踏まへて観ると印象はかなり変はる。
クララは「二本足で歩くのが恐ろしい」と言つた。それはサルトルの言ふところの「人間は自由の刑に処されてゐる」に通じる。クララにとつて車椅子は唯一の拠り所で、いはば神であつた。車椅子が壊れるのはニーチェの「神は死んだ」に相当し、クララはこれから自分の足で歩いて――自由を行使して――いかなければならない。
『ハイジ』第51回は、実存主義を簡単に説明するには恰好の材料だ。

  • 追記。石川淳の短編小説『アルプスの少女』を読む。ハイジとアルムおんぢはどこに行つたのでせうか。