(日付変はつて)きのふの新聞一面コラム
生まれる前の子供たちがこの世に降り立つべく、船に乗る。生まれたら、お前は何の職に就くのかい? 「時」の番人が尋ねる。メーテルリンクの「青い鳥」である
「時」の番人だから未来はお見通し…と思えばそうでもない。医者になると告げた子供に文句を言った。「もうたくさんなのに。地上は医者でいっぱいなんだ」(堀口大学訳、新潮社)
読売新聞・編集手帳より。
メーテルリンクの「青い鳥」のチルチルとミチルは、これから生まれる子供たちが集まっている「未来の王国」を訪れる。2人が地上へ向かう子らを乗せた船の出発を見送ると、やがてはるか遠くからわき上がるような喜びと希望の歌が聞こえてきた
「あれはなあに? あの子たちの声じゃないね」。チルチルが聞くと、案内役の「光」は答えた。「ええ、あれはあの子たちを迎えにきたおかあさんたちの歌声ですよ」。子供たちは喜びと希望のコーラスによってこの世に迎えられるのだ
毎日新聞・余録より。
毎日と読売とが、受け入れ拒否により出産後に死亡した都内の妊婦のことをネタにしてゐるが、どちらもメーテルリンクの『青い鳥』をそれぞれ違ふ場所から引用してゐるのが面白い。