『妄言師@無銘の銘柄.jp』アーカイブ

2019年1月まで更新していた、はてなダイアリー『妄言師@無銘の銘柄.jp』を保管しています。

けふの社説

きのふの名古屋高裁違憲判断を受けて、新聞各紙がそれぞれの見解を述べてゐる。
朝日と産経とで印象に残つたのは、イラク派遣云々ではなく裁判所のあり方についてである。

  • 朝日

日本の裁判所は憲法判断を避ける傾向が強く、行政追認との批判がある。それだけにこの判決に新鮮な驚きを感じた人も少なくあるまい。
本来、政府や国会をチェックするのは裁判所の仕事だ。その役割を果たそうとした高裁判決が国民の驚きを呼ぶという現実を、憲法の番人であるはずの最高裁は重く受け止めるべきだ。
  http://www.asahi.com/paper/editorial20080418.html

  • 産経

自衛隊違憲」判断は35年前、あったが、上級審で退けられた。今回は、統治の基本にかかわる高度に政治的な行為は裁判所の審査権が及ばないという統治行為論を覆そうという狙いもあるのだろう。
  http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080418/trl0804180330001-n1.htm

日経は「『戦闘地域』『非戦闘地域』の区分け基準のあいまいさと、その大本にある集団的自衛権を巡る政府の憲法解釈の無理」が違憲判断の原因とし、自衛隊の平和維持活動(とくに後方支援)は必要としたうへで、集団的自衛権を巡る憲法解釈の変更を主張してゐる。日経は改憲までは望んでゐないのか?

私たちは国連平和維持活動(PKO)や多国籍軍の平和構築活動に対し自衛隊が協力をするに当たり、戦闘活動には参加すべきでないが、後方支援には幅広く参加すべきであると考えてきた。
このためには集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更が必要となると指摘してきた。
(中略)
集団的自衛権の解釈変更をめぐる議論に目をつぶったままで恒久法*1を制定すれば、いま起きている混乱は続く。
  http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20080417AS1K1700817042008.html

今回、妄言師がもつとも共感できたのは毎日である。“人道復興支援” でなにを秘密にする必要があるのか。秘密にしなければいけないことをやつてゐること自体が問題ではないのか。

イラク自衛隊を派遣した小泉純一郎首相(当時)は、国会で非戦闘地域について質問されて、「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域である」と答弁し、物議をかもしたことがある。また、党首討論では、イラク国内の非戦闘地域について聞かれ、「イラク国内の地名とかを把握しているわけではない。どこが非戦闘地域かと聞かれても、分かるわけがない」と発言したこともあった。
判決は、極めてあいまいだった当時の首相発言を指弾する内容でもある。政府は判決を真摯(しんし)に受け止め、活動地域が非戦闘地域であると主張するなら、その根拠を国民にていねいに説明する責務がある。
さらに、判決が輸送対象を「武装兵員」と認定したことも注目に値する。政府はこれまで、空自の具体的な輸送人員・物資の内容を明らかにしてこなかった。小泉首相は、当時の記者会見で「空自による物資の輸送はしている。しかし、どんな活動をしているかは部隊の安全の面があり、公表できない部分もある」と述べていた。
しかし、輸送対象に米軍を中心とする多国籍軍が含まれており、当初の「人道復興支援」から「米軍支援」に変質したのではないかとの見方が前からあった。
政府は、輸送の具体的な内容についても国民に明らかにすべきである。
  http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080418k0000m070137000c.html

自民党機関紙こと読売は、政府の言ひ分をそのまま自社の主張にしてゐるだけで、面白味がないので引用はしない。

*1:引用者註。自衛隊の海外派遣を随時可能にする法案。