『妄言師@無銘の銘柄.jp』アーカイブ

2019年1月まで更新していた、はてなダイアリー『妄言師@無銘の銘柄.jp』を保管しています。

「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を都立の中高一貫校が採用

3年前に発売された市販本を読んだことがあります。無銘は当初、彼らの試みを期待してゐました。ところが完成した教科書は、あまりにもハンドルを右に切りすぎた代物で(ツッコミどころが満載で、“読み物”としてはなかなかのものでしたが)、歴史教科書としては使ひ物にならなかつたのです。
執筆者の中には天皇に対して特別な感情を抱いてる方がゐるやうです。隠岐に“流された”後鳥羽上皇後醍醐天皇を“移された”と書くところなどはその顕著な例です。昭和天皇を取り上げた人物コラムには、その人柄を敬語を交へて讃へられてゐます。歴史教科書に必要なのは取り上げる人物の “人柄” などではなく、冷静・客観的に書かれた “事実” です。間違ひなく言へることは、昭和天皇は日本二千年の歴史において、国民を未曾有の危機に陥れた “暗君” です。戦後、日本はこれまた “未曾有” の発展を遂げませたが、ただの象徴に過ぎない戦後の昭和天皇は、それには直接関与はしてをりません。無銘的には、御前会議といふ形で戦争に直接関与した昭和天皇は、何らかの形で責任をとるべきだつたと思つてゐます。
大東亜戦争がのちに東南アジアの解放に繋がつたといふのは “春秋の筆法” としか思へません。日本の価値観を東南アジアの人たちに押し付けたといふ点では、イギリスやフランスと一緒です。
この本を買つた当時(平成13年)はNHK大河ドラマで蒙古襲来を取り上げてゐたのですが、この教科書には “蒙古襲来” といふ言葉は使はれてをりません(資料として“蒙古襲来絵詞”は使はれてゐます)。“元寇” といふ言葉は他の教科書でも使はれてゐますが、この言葉は “和寇” が登場したのちに作られた言葉です。
また、他の教科書との違ふところは、“日本神話” が取り上げられてゐるところです。しかし、神話が収められてゐる古事記日本書紀は『天皇王権の正当性』を示すために編まれたもので、これを歴史教科書で取り上げるのでは “皇国史観の残滓” とこき下ろされても仕方がありません。ただ、日本神話は読み物としては面白いので、無銘的には国語の教科書に載せるぶんには一向に構はないと思ひます。
改訂版が作られるさうですが、無銘はもう期待してをりません。最後にレイラ・ハミルトン嬢の言葉を捧げたいと思ひます。
「あなたには失望したわ」