『妄言師@無銘の銘柄.jp』アーカイブ

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吉川英治著『新・平家物語』

電子書籍には“全一冊”と銘打つて、紙なら複数巻に別れてゐるものを一纏めにして売つてゐるものがある。バラで買ふより価格は安いが、データが大きすぎて電子書籍専用端末では読み込みに時間がかかつてしまふ。講談社文庫版で16巻、新潮文庫で20巻もある本のデータの重さは半端ではない。仕方がないのでタブレットPCで読むことになるのだが、液晶画面での長時間の読書は、目に負担がかかりしんどい。職場の昼休みを使つて少しづつ読み進めて昨日読了した。全巻読破に2年2ヶ月も要した。
見せ場を敢へて“外して”ゐる印象を受けた。清盛臨終の瞬間は描かれず、知盛は「見るべきほどのことは見つ」とは言はないし、弁慶の立ち往生もないし、一番のヒールである後白河院の最期がぞんざいだ。
あとは蓬子と弁慶との関係をハッキリさせないまま終はつてしまつたのはモヤモヤが残るところ。あまりの大長篇に伏線の回収を忘れてしまつたのか?
平家の良識派とも云へる重盛・知盛・経正の最期は切ない・・・。・゜・(ノД`)・゜・
宮本武蔵』でも同じ感想を抱いたが、映像作品を切つ掛けにある作品に興味を持つたときは、必ず原作を読んだ方が良いと言ふことだ。『武蔵』でも巌流島の意外な結末は原作を読まなければ分からなかつたし、『新・平家』でも朱鼻の伴卜の末路は映像作品では分からなかつただらう*1
いつか古典平家にも再挑戦したいところだ*2

*1:たとへば、NHKの人形劇では、壇ノ浦の戦ひのあとで源氏の兵に捕まつたところで出番が終はるが、原作ではその後どうなつたのかも触れてゐる。

*2:忠度都落で挫折した。